電験三種『理論』科目合格の勉強法:電気素人の独学チャレンジ

受験動機

ふたば亭プラスです。

最初に断っておきますが、私は電気関係については全くの素人です(仕事も全然関係のない別な業種)。
そんな中で、私が電気に興味を持ち始めたのは、第二種電気工事士試験にチャレンジして免許取得できた事が発端です。

筆記試験だけでなく実技テストもあり、制限時間内に一つのユニットを組み上げるという練習は、工作好きの私にとって非常に楽しいものでした。
そして、この電気工事士の上位資格である「電験三種」がどんなレベルのものなのか?
記念受験だけでもしてみようと思ったのです。

なお、電験三種には『理論』、『電力』、『機械』、『法規』の4科目があり、全てに合格しないと免状は発行されません(4科目とも約6割以上の正解が必要)。

ただ、現在の仕事の業務量、および勉強に専念できる時間を考慮すると4科目全てを対象とするのは無理があると思い、まずは『理論』のみに特化して試験対策をする事にしました。
免状が欲しいというよりは、電気に関する知識を増やしたかったのです。

私と同じように電気素人の人間が電験三種にトライする時は、まずは『理論』から取り掛かるのがベストとされています。

『理論』が4科目の中で一番の基本。他の科目とも密接に関連。

そして、『理論』で大体の感触をつかんだ上で、「他の科目もいけそうかな?」と思えるようになったら、次年度以降チャレンジしてみようと計画を立てました。
電験三種には「科目合格保留制度」というありがたいルールがあり、ある1科目に合格すれば翌年と翌々年度のその科目試験は免除されるので、要は3年間で4科目に合格すればいいのです。

逆に、「理論」を勉強して全く歯が立たなかったら、潔く諦めようとも思っておりました。

この記事は『理論』の勉強方法のみにフォーカス

事前にご了承ください。

他の科目『電力』、『機械』、『法規』は対象外です。


<追記>
その後、電験三種合格を達成しました!


申し込み

【受験費用】
¥4,850(インターネット)
¥5,200(郵送)

『理論』のみ1科目受験でも、4科目受験と同様の費用がかかります・・。この辺りは何とかして欲しいものです(四分の1にするとか)。

【申請先】一般財団法人 電気技術者試験センター


合格率

【理論:科目合格率】14.8%(過去6年平均)

年度ごとにバラツキはあるものの、合格率は平均して14.8%ほどです。
ちなみに、私が受験した平成30年度は11.6%と、例年に比べて難易度は高目だったようです。


勉強方法

まずは参考書選びから始めようとネット情報をベースにして、実際に本屋にも足を運んで厳選した本が下記の2冊です。


参考書

①1冊目:TAC出版「みんなが欲しかったシリーズ」

この参考書は、電気初心者にも分かりやすいように、カラーイラストをふんだんに盛り込んで非常に丁寧に解説してくれてます。

初心者でも読みやすい!
理解しやすい!

電験三種で有名な参考書の多くは古臭いものが多く、眺めているだけでも苦痛になってきますが、この参考書はそういった概念を吹き飛ばしてくれました。(初版発行も新しく2018年3月)

本屋でパラパラとめくって読むだけでもスーッと頭に入ってくる感じ。
ただ、説明が丁寧な分、非常に分厚い・・・。
「教科書編」が374ページ、「問題集編」が426ページで、合計800ページもあります。

しかし、ありがたいのが「教科書編」と「問題集編」とで2つに分けて使用できるという事。
もともとそのような作りになっています。

要は問題集を解いていて分かりづらい箇所があると、横に教科書を置いて並べて確認する事ができるのです。また、ある程度学習が進んできて、教科書は見なくてもいいというレベルに達すると、問題集のみを持ち運んでスキマ時間に繰り返し学習する事もできます。

そして、この問題集の解説もそれなりに丁寧に記載されています。ポイントさえ押さえておけば、問題集の解説だけでも充分対応できるでしょう。

また、問題集のもう一つ特筆すべき点は、難易度別にレベルが表示されている事。
A、B、Cと3段階表示がされており(A:簡単 < B:標準 < C:難)、問題を解く前にそのレベルをざっくりと知る事が出来るのです。
もし勉強する時間があまり取れない場合は、少なくともAとB問題だけを徹底的にやるという使い方をしても良いでしょう。

私は、最初の取り掛かりとしてこの参考書をベースに勉強して、「理論」に関する全体像を把握する事が出来ました。

ただ参考書1冊だけでは不安なので、もう1冊選んだのが下記書籍です。


②2冊目:オーム社「やさしく学ぶシリーズ」

これは、①「みんなが欲しかったシリーズ」をグッと簡略化したようなもの。

各セクション単位で簡潔にまとまっているのが特徴で、勉強するべきポイントが一目で分かるような構成になっています。

但し、欠点として演習問題が圧倒的に少ない事が挙げられます。そして、演習問題の解説も簡略的にざっくりと書かれているので、「なぜこうなるの?」と首をかしげる部分も多くありました。

正直、電気初学者の方がこれ1冊だけを主体に勉強を始めると、途中で断念するかもしれません。

①「みんなが欲しかったシリーズ」である程度基礎を固めて、②「やさしく学ぶシリーズ」でポイントを押さえていく、というような使い方をした方がいいでしょう。

ポイント把握の為に補足的に使用するような位置付け

当然、①だけを集中的にやって、②はやらないという選択肢もありだと思います。若しくは、辞書代わりに使うという方法もいいかもしれません。


なお、巷では「これだけシリーズ」や「完全マスターシリーズ」の人気があるようですが、初学者がいきなりこれに手をつけるのはちょっと危険です。電気の事がある程度分かっている方を対象に書かれているような雰囲気があります。

少なくとも、未見のままネットで発注をするのは避け、本屋に足を運び自ら内容を見てみる事をお勧めします。

私は本屋で1時間ほどかけて、この2冊の数十ページ分読んでみましたが、「?」がたくさん頭に飛び交ってしまいました。。。

ただ、理論の内容を理解した現在、改めてこの2冊を読むとその完成度の高さに唸りました。
素晴らしい名著です。

電験という相手の全体像を把握した上で、取り掛かる部類の参考書かと思われます。


過去問題集

そして、上記①と②の参考書で基礎を固めたあと、取り掛かったのが「過去問」です。

通称、「電話帳」と呼ばれているもの。

本屋でこれを最初見た時、驚きました。。。。本当に電話帳並みの分厚さ。重量もズッシリ。

しかし、分厚い分、問題の解説の丁寧さは驚異的。「これでもか!」というくらい徹底的に詳しく書かれています。これには感動しました。

あと、巻頭には各セクションごとの問題の出題傾向や予測なども書かれていて、どこにポイントを絞って学習していけば良いのか、自ずと分かるような構成となっています。

もの凄い情報量&徹底した解説

「こんなのやる時間ない」、という人もパラパラ読み流すだけでも価値があります。10年分の情報を捉える事が出来ます。

しかも、上記①「みんなが欲しかったシリーズ」の問題のベースが過去問なので、自然と繰り返し学習も行えるのです。また、問題の解き方の手法が①と違った観点で書かれているものもあり、①で若干曖昧だった点も、この過去問の解説でクリアになるという事も多々ありました。

個人的には、この過去問題集はやり込む必要はなくても、持っておくべきバイブルのようなものと思っております。


YouTube動画

独学で電験を勉強しようとすると、どうしても途中で中だるみしてしまいます。私は「理論」だけに特化していたのですが、4科目をフル受験しようとしている方は尚更かもしてません。

そんな中、YouTubeで各セクションごとに非常に丁寧に解説をしてくれる動画を見つけました。視聴回数も多いので受験生には有名なのでしょう。

アカウント名
「電験合格」

これを見て驚愕したのは、無料とは思えない程の内容の濃さ。
充分、有料コンテンツでも通用する程のボリューム。

ここにはその一部のみを掲載しますが、「理論」だけでも十数本のシリーズ動画があります。
「電験合格」で検索すれば山ほど出てきますよ。

圧倒的に分かりやすい神講義。先生のスキルが異常。

講師の先生は、おそらくどこかの高校(高専or工業高校?若しくは別機関からの非常勤講師?)で教鞭を取っている方なのでしょう。その日の授業の内容をフルバージョンで動画を取って、YouTubeにアップしてくれているのです。
1本の動画が、60分〜90分あり。

多分、学校の生徒向けに動画をアップしていると思うのですが、パスワードをかける事もなく一般にも公開してくれています。

私のような素人の独学者にとっては神のような動画。実際に授業に参加しているような錯覚に陥ります。

そして何よりも素晴らしいのが、この先生の教鞭のスキル。
基本から応用にかけて、とてつもなく分かりやすく噛み砕いて説明してくれます。電気初心者でもすんなりと理解できるでしょう。

電験の公式は暗記するものではない。理解するもの。

毎回、この先生は口癖のように言われており、公式の一つ一つを「なぜそうなるのか?」懇切丁寧に教えてくれます。お陰様で私は、理論に関する公式を一切暗記する事なく、試験に臨む事が出来ました。

これから初めて電験を目指される方は、必ず見るべきです。
神講義を存分に楽しむ事ができるでしょう。


雑誌「新電気」

電験試験の時期が近づいてくると、オーム社が発行している月刊誌の「新電気」で、電験対策の特集が組まれるという事を知り、7月号と8月号を購入してみました。

はっきり言って、私は電験受験をするまで、この雑誌の存在を知りませんでした。まさか電験三種受験専用の雑誌があるとは・・・。
改めてこの資格の人気度の高さを認識した次第です。


【7月号】

付録でこんなハンドブックがついていました。一問一答のクイズ形式の「◯×判定トレーニング」で理解度の総チェックが出来ます。しかもサッとカバンにも入れやすいコンパクトサイズ。

まあ、これ1冊で全てを網羅している訳ではありませんが、ある程度の基本チェックは可能です。スキマ学習に存分に利用できました。


【8月号】

この号には、「予想問題集」が掲載。

各年度ごとの傾向を見極めて、厳選した問題が選定されていると思われ、本番前の模試がわりに取り組み事ができました。

なお、試験対策だけでなく、電気に関連する技術的な記事も多数掲載されていて、単純に雑誌として読んでも面白いものでした。逆に、電験三種を初めて受験する時は、参考書や問題集からではなく、先にこの雑誌に目を通しておくと、より興味深く学習できるかもしれません。


電卓

これまで安物の電卓は持っていたのですが、今回電験三種を受験するのに際し、少し大きめでキータッチの良いものを購入しました。

様々な情報を収集した中で、電験用電卓として評判の良かったシャープの「EL-N942」。

実際に購入して使ってみると、確かに使いやすい!

私はもともと手や指が大きい方なのですが、隣同士のキーボタンを同時押ししてしまうようなミスをほとんど抑える事ができ、すぐにブラインドタッチができるようになりました。

また、キーボタンを押した時の感触もよく、この電卓を使う事が病みつきになってしまいそう。

「さあ、やろう!」という勉強の原動力の要因になったアイテムの一つでもあります。


以上、「理論」の勉強に費やした期間は約2ヶ月。1日に約2時間勉強していたので、実質120時間ほどになります。

「理論」勉強時間:約120時間

どれだけその日疲れていても、毎日欠かさずに勉強するようにしました。見たいTVがあっても、好きな本を読みたくてもグッと我慢して机に向かうようにしたのです。

また、スキマ学習も欠かさず行っていきました。

これまで様々な国家資格を取ってきた受験のノウハウをここにぶつけてみたのです。

これだけやっていると、ある程度「理論」の全体像が見えてきて、過去問の解き方やパターンも身についてきました。

そして、そこそこの自信を持った状態で試験に臨む事ができたのです。


受験当日

私は仕事上、出張が多いため、これまで受験してきた様々な国家資格もその都度受験地を変えています。

今回の電験三種は大阪で受験。会場は「大阪大学」でした。

試験開始の1時間ほど前に到着したのですが、受験案内板の前には既に数十人が来ており、ベンチや地面に座って参考書とノートを開いて猛勉強していました。

その迫力がヒシヒシと伝わってきます。

1年に1回しかない試験、しかも中には人生がかかっている人もいるのでしょう。オーラ感が半端ではありませんでした。

そして、定刻になり、いざ教室へ。

私は試験会場の人間ウオッチが好きで、これまで他の国家資格でも教室に入って直前まで勉強するよりは、周りの受験生がどのような方々なのか観察する事に時間を費やしています。

皆さんの年齢は、だいたい30〜50代が多かったように思います。そして9割が男性。
電気工事士試験の時と比べると、大半が物静かで大人しそうな雰囲気。その反面、目つきは鋭く一匹狼的な、所謂エンジニア臭が漂ってました。

女性も数名いましたが、40代くらいの普通の主婦という感じの方々でした。家事や育児の合間に電験三種の勉強をしてたのでしょうか。その中の一人がボロボロになった参考書を一心不乱に読んでいたのが印象的でした。
「なぜ電験の勉強を?」フリーアンケートが可能であれば聞いてみたいものです。

また、一人だけ杖をついたおじいさんもいました。どうみても80歳は超えているご年齢。この年齢まで国家資格を取得しようとする向上心が凄い。少し心を打たれてしまいました。自分もそうでありたいものです。

やがて試験官の方々が教室に入ってこられて試験開始。

「理論」は、9:15〜10:45の1時間30分。

緊張しながらも、順調に解いていたのですが、それでも1問1問の計算に時間がかかります。

電卓をカタカタやっていると、あっという間に退出可能時間の60分が来ました。

ここで驚いたのが、途中退出する方の多い事。私の教室には100人近くがいたのですが、半数くらいの方が退出して行ったのです。

「ええっ!!、みんなそんなに早く解けたの?」と動揺しながらも、自分のペースは乱さず、私は最後の見直しも含めて時間きっちりまで使い切りました。

感触として手応えはありました。

とりあえず、やるだけの事はやったという達成感と適度な疲労感。これまでの勉強の成果をぶつける事が出来たのです。それだけも満足でした。

なお、後の「電力」「機械」「法規」は何も勉強していなかったので、さっぱり分かりませんでしたが、受けるだけでも受けておこう思い、とりあえずはマークシートを埋めて提出だけはしておきました。
ただ、今思えば時間の無駄だったかな。。。
早目に帰って、翌日の仕事の資料整理をしていた方が良かったと若干後悔しました。


試験結果

試験後、某出版社のホームページにて「理論」の自己採点をしたところ8割近く取れてました。思わずガッツポーズが出たのを覚えています。

そして、ネット上の合格発表日。

無事合格してました!

自己採点で合格を確信していたとはいえ、こうやって正式判定結果を確認すると嬉しいものです。

そして後日、試験結果通知書も郵送されてきました。

「理論合格」という目標達成!

この合格は、平成32年まで有効です。
(途中で年号が変わりますが。)

引き続き、残り3科目「電力」「機械」「法規」についても理論で構築した基礎力を忘れないうちに、可能な範囲でチャレンジしてみようと思っています。

理論が120時間の勉強で合格できたので、後の3科目は単純計算すると400時間ほど必要かもしれません。1日2時間勉強するとして、6〜7ヶ月。

ただ、ちょっとネックになっているのが、翌年(2019年)の電験三種の受験のタイミング(9月)に公私共々、繁忙期を迎える可能性が高いという事。

長期的にじっくりと計画を組んでみようと思います。


その後

その後、2年かけて「機械」「電力」「法規」に挑戦し、電験三種の合格を勝ち取りました!


電験一種 最年少合格者情報

電験一種は、電気関連資格の最高峰(技術士除く)。
この難関資格に、20歳(高専生)で合格した学生がいます。

詳細は、上記の記事を見て頂きたいのですが、この学生は、高専3年からまずは電験3種にトライし、立て続けに2種、1種と全て一発合格してきたとの事。驚異的です。。。

しかも、彼は陸上部に所属しており、全国大会にも出場しているほどの成績を残しているようです。まさに文武両道。

高専卒業後は大学に進学して電気材料の研究を行っていきたいようですが、彼なら立派な研究者になるでしょうね。


勉強に疲れたら・・・ちょっと一服

勉強に疲れたら動画配信サービスで一息つくのはどうですか?
『hulu』や『U-NEXT』など多くの人気サービス(VOD)の特徴を分かりやすくまとめてみました。

無料視聴期間もあるので、じっくりと自分に合うものを選ぶ事ができますよ。


取得資格一覧

私がこれまで取得してきた資格の一覧表を下記ページに記載しています。

各資格の「おすすめテキスト」「勉強方法&ノウハウ」「試験概要」「難易度」などの記事にリンクさせていますので、参考にして下さい。


また、それぞれの免許証の「形状」や「サイズ」、及び「表記内容」がどうなっているのか、下記の記事にまとめました。
同じ資格を目指している方がいれば参考にして下さい。
現物の免許証を見る事で手にした時の具体的なイメージが湧き、多少なりともモチベーションが上がると思います。