有機溶剤作業主任者 〜合格までの道のり〜

受験の経緯

現在の業務(某メーカーの化学系エンジニア)で研究開発や物性分析を行っておりますが、薬液及びドラフトを管理する役職に就く事になり、会社からの指示でこの資格を取る事になりました。

有機溶剤は常温で蒸発しやすいため、作業時に吸い込んでしまったり皮膚から吸収されてしまう性質があります。吸い込んでしまうと中毒症状や、めまいや頭痛、吐き気などの症状を引き起こすため、有機溶剤を扱う職場では「有機溶剤作業主任者」の資格を持った人が作業管轄する必要があるのです。

ちなみに有機溶剤とは、有機溶剤または有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤の含有率が5%を超えるもの)を指します。

有機溶剤
→対象含有率が5%超のもの

資格取得者は社内で重宝されると同時に就職や転職でも有利になりますし、求人の応募資格欄にも「有機溶剤作業主任者の資格取得者は優遇します」という条件をたまに見る事があり、自分のスキルアップの為にも持っておいて損はない資格と思われます。


難易度と合格率

【難易度】★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【試験日程】都道府県ごとに不定期実施
【受験者数】非公表
【合格率】非公表(おそらく90%以上)


申し込み

【講習費用】約15,000円
(講習&受験料&テキスト代金)

【申請先】
全国各地の都道府県の労働基準協会で申し込みが可能。例えば東京都の場合、下記ページ(東京労働基準協会連合会)から日程選択や受講申請方法が記載されている。

全国でも月に一回くらいのペースで講習が開かれているので、居住地の労働安全衛生協会や労働安全課、労働基準協会連合会に問い合わせるか、ネット上でも紹介されています。


講習

事前勉強は一切やっていません。協会から当日支給されるテキストを元に2日間の講習が行われます。非常に分厚く500ページほどあります。

【講習の内容】
◆有機溶剤による健康障害及びその予防措置に関する知識
◆作業環境の改善方法に関する知識
◆保護具に関する知識
◆関係法令

そして、2日間の講習の最終日、約1時間の修了試験があります。これに合格する必要があるのですが、どの部分がポイントなのか講師の方から教えて頂けるので、そこさえ押さえておけば落ちる事はないと思います。

試験問題は講師が言った所からしか出ない

逆に言うと、2日間ちゃんと聞いていないと確実に落ちます。

ただ、私が受講した時は100人程いた会場で全員が怖いくらいの集中力で講義に耳を傾けており、寝落ちしている方など皆無でした。


対象薬品

有機溶剤として対象となる薬品は下記の54種類であります。
有機溶剤とは(厚生労働省HP)

危険物取扱者と被る薬品が多いので、このような薬品を取り扱う業務に就く方は両方の資格を持っておくと良いでしょう。とんでもなく種類が多くありますが、全部覚える必要はありません。講師が覚えるポイントだけを教えてくれます。

ただ、実際に業務で使用する薬液については、取扱医&危険性などしっかりと身に付けておいた方がいいですね。テキストには非常に詳しく記載されており、今後の業務で辞書としても使用できます。

<第1種有機溶剤>
クロロホルム
四塩化炭素 1,2-ジクロルエタン(別名二塩化エチレン)
1,2-ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
1,1,2,2-テトラクロルエタン(別名四塩化アセチレン)
トリクロルエチレン
二硫化炭素

<第2種有機溶剤>
アセトン
イソブチルアルコール
イソプロピルアルコール
イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)
エチルエーテル
エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)
エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)
エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)
オルト-ジクロルベンゼン
キシレン
クレゾール
クロルベンゼン
酢酸イソブチル
酢酸イソプロピル
酢酸イソペンチル(別名酢酸イソアミル)
酢酸エチル
酢酸ノルマル-ブチル
酢酸ノルマル-プロピル
酢酸ノルマル-ペンチル(別名酢酸ノルマル-アミル)
酢酸メチル
シクロヘキサノール
シクロヘキサノン
1,4-ジオキサン
ジクロルメタン(別名二塩化メチレン) N,N-ジメチルホルムアミド
スチレン
テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン) テトラヒドロフラン
1,1,1-トリクロルエタン
トルエン
ノルマルヘキサン
1-ブタノール
2-ブタノール
メタノール
メチルイソブチルケトン
メチルエチルケトン
メチルシクロヘキサノール
メチルシクロヘキサノン
メチル-ノルマル-ブチルケトン

<第3種有機溶剤>
ガソリン
コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む。)
石油エーテル
石油ナフサ
石油ベンジン
テレビン油
ミネラルスピリット


結果発表

会社経由で発表がありました。落ちることはないとは思っていましたが、さすがに結果発表があるまで気が気ではありませんでした。

そして・・・、合格していました。とりあえず安心。


免許申請

後日、免許(修了証)が発行されたのですが、結構立派なカードタイプのもので驚きました・・・。

ちょっと嬉しい誤算。


作業主任者の業務

この資格を取得し作業主任者となった時、具体的にどのような業務を行う必要があるのか代表的なものを列記しておきます。

(1)作業の方法を決定し労働者を指揮。

(2)局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1月以内ごとに点検する。

(3)保護具の使用状況を監視する。

(4)タンク内作業における措置が講じられていることを確認する。

作業者の生死を守る事!

責任のある役職に就きこの資格を持つと言う事は、従業員の生死に関わる重大な任務を担う事になります。ペーパーは許されません。心して臨んだ方がいいと思います。


これまで私が取得してきた国家資格&検定の一覧表は下記にまとめています。「効率の良い勉強方法」「おすすめテキスト」「試験概要」「難易度」「費用」など主要記事とリンク。参考にして下さい。