目次
機械式時計とは
ふたば亭プラスです。
現在、腕時計はクオーツが主体ですが、ロレックスやオメガなど機械式時計の人気は今でも根強く残っています。
電気で動くクオーツに対して、機械式時計はゼンマイで動きます。要はゼンマイのほどける力が歯車に伝わって針が動くのですが、その基本構成は下記のようになっています。
私もロレックスのエクスプローラー2(Ref.16570)という時計を20年間使い続けています。
20年間一切トラブルなし!
この時計は、会社に就職して最初のボーナスを全額つぎ込んで購入したもの。当時の価格で約42万円しました。
それからの波乱万丈な人生、20年間をいつも一緒に歩んできました。定期オーバーホールは5年ごとに行っており今でも日差+2秒の精度を保っています。
外観も都度研磨しているためピカピカな状態。
大事に使い続ければ、時計にも命が宿るのですね。
この時計を見た人に「これ20年前以上のものだよ」と言うと皆一様に驚かれます。
この時計についての詳細は下記ブログ記事にも書いてますので、ご参考にして下さい。
ちなみに、この時計を買った時、こんなGARANTIEが付いてました。本物である事の証明書のようなもの。
入っていたのは、こんな箱。高級感満載です。
そして、この時計の内部構造は下記のようになっています。
オーバーホール時の分解清掃
オーバーホールの分解清掃の際、お店の人に頼んで撮影してもらいました。部品一つ一つの美しさを感じて頂けると思います。
ちなみに、私がいつも定期メンテをお願いしているのは(株)ウイン。
ここの技術者の方々は全員が元ロレックス社OBで、後述するCMW資格や時計修理技能士1級を所有されています。私が全幅の信頼を寄せているお店の一つです。遠方に居る方でも郵送対応可能。
しかしこの時計、残念な事に今は廃盤となり売っていません。
その後継機種として下記モデル(Ref.216570)に切り替わりました。
と同時に値段も倍以上に跳ね上がってしまいました・・・・。
なお、このような機械式時計のオーバーホール作業は素人では絶対にできません。プロの職人の技が必要になります。
そんなプロになる為の代表的な国家資格が下記2つ。
①時計修理技能士
②マイスター公認高級時計士(CMW)
この2つがどういった資格であるのか説明していきます。
①時計修理技能士
「時計修理管理技能士」とは各都道府県の職業能力開発協会が主幹となり、時計修理の技術を評価するもので等級には1級〜3級まであります。
受験資格
各級ごとに、このように実務経験が規定されています。
◆1級
・実務経験7年以上
・3級合格後4年の実務経験
・2級合格後2年の実務経験
◆2級
・実務経験2年以上
・3級合格者
◆3級
・1日以上経験があればOK(*1)
(実質ゼロ年)
(*1)時計メーカーor専門店に就職、若しくは専門学校等に入学し、1日でも実務経験を有していれば受験可能。
詳細は、厚生労働省から発行されている下記サイトを参照願います。
技能検定の受験に必要な実務経験年数一覧
受験申し込み方法
全日本時計宝飾眼鏡小売共同組合が受付先になっているのですが、試験の実施は各都道府県になるので、「中央職業能力開発協会」のホームページから自分の住んでいる都道府県を確認の上、資料請求します。
【厚生労働省からの配布案内書】
「技あり!日本!技能検定」(平成30年度版)
ここに掲載したのは平成30年度版ですが、毎年更新されていくので都度「中央職業能力開発協会」のホームページをご確認下さい。
試験日程
年2回
・前期:6月〜9月
・後期:12月〜2月
都道府県ごとに試験日程は異なるようです。
詳細はこちらから。
技能検定試験日程
試験内容
基本的に、「筆記試験」(マークシート)と「実技試験」の2部構成となっています。
詳細は下記の構成労働省発行の資料に記載されています。
時計修理技能検定試験の試験項目及びその範囲
この中の「実技試験」についてざっくりと要点を抜粋すると下記のようになります。
<実技試験>
【1級】
・クオーツの分解、洗浄、組立
・機械式の分解、洗浄、組立
【2級】
・クオーツの分解、洗浄、組立
【3級】
・電池交換、バンド調整、etc
中央職業能力開発協会が発行している下記資料も併せてご確認下さい。
時計修理実技試験項目
これを見ると、機械式時計の修理を行うには、最難関の1級が必須条件であると言えるでしょう。
受験料
各都道府県ごとに定められていますが、基本は1級〜3級とも全て同額であり、標準金額は下記のようになっています。
<標準金額>
◆学科:3,100円
◆実技:17,900円
但し、今後改定されていく可能性もあるので、最新情報は必ず各都道府県の職業能力開発協会に問い合わせて下さい。
都道府県職業能力開発協会
なお、上記受験料の他に「実費手数料」(8,000円〜20,000円ほど)が別途必要な場合があります。
合格基準
各級共通でこのようになっています。
<合格基準(共通)>
◆筆記:65%以上
◆実技:60%以上
合格率
都道府県ごとに実施しているので、合格率にはバラツキがあります。
しかもネット上では非公開。
そこで大阪の商工労働部に直接聞いてみました。
(平成29年度実績です)
<合格率(大阪)>
◆1級:約38%
◆2級:約61%
◆3級:約68%
やはり、1級は狭き門のようです。
勉強方法
筆記について「独学」と「専門学校」と選択することができますが、独学で行うのはかなり困難。そもそも定番となるテキストがないようです・・。
あえて言うと、この本でしょうか。
最近発行されたものの中では比較的評価が高く、機械式時計の「仕組み」「組立て」「調整」について非常に詳細に記載されているようです。調べているうちに趣味の一環として、私も欲しくなってしまいました。
そして、過去問を下記サイトからダウンロードして不明な部分をチェックする、というような使い方がいいのではないかと思います。
九州学術研究所「時計管理技能士」
(残念ながらこのサイトは2019年3月31日を持って終了したようです。)
ただ、「受験資格」の欄にも書いたように、3級でさえも最低1日以上の実務経験が必要となります。よほど時計に詳しくて経験を有している方でない限り専門学校に行った方がいいでしょう。筆記試験に即したテキストも手に入れることができるし、時計修理の実技練習も徹底的に行う事ができます。
期間はだいたい2年〜3年。
一例として、このような専門学校があります。
専門学校ヒコみづのジュエリージュエリーカレッジ・ウオッチコース
ちなみに、これが授業&実習風景のようです。みんな目がキラキラしていて夢が溢れています。羨ましい・・・・。私ももう少し若ければチャレンジしたかった。
②マイスター公認高級時計士(CMW)
これは時計の技術者であれば誰でも憧れる最高峰の資格のようです。ちなみに、CMWとは公認上級時計師(Certified Master Watchmaker )の略。
当然ながら、時計修理技能士とは全く組織が異なります。主幹となってるのは「日本時計師会」。こちらの資格の方がレベルとしては格段に上です。
では、どのような資格なのか説明していきます。
受験資格
自動巻き腕時計の分解洗浄組み立て調整及び時計旋盤による携帯時計修理部品の製作経験が有り、時計専門学校等出身教育機関代表者又は先輩CMW又は「日本時計師会」事務局長の推薦が得られる者。
当然ながら未経験者は受験できません。
受験申し込み方法
窓口は日本時計師会
J-CW試験概要
上記サイトの試験申込フォームに記載して写真を添え郵送。
試験日程
年1回
年度ごとに都度決定して「日本時計師会」のホームページで発表。
ちなみに、2018年度は2月下旬〜3月上旬のうち2日間実施。
試験内容
◆学科:天文・物理・数学など時計に関わること全般から100問出題
◆実技:天芯作成、自動巻時計の点検および不良個所(2か所)の修理
この試験内容は後述しますが超難解です。
受験料
50,000円
なお、日本時計師会か若しくは時計専門学校等教育機関在学中又は卒業年次内者であれば1万円控除されるようです。
学科・実技の両方を合格しなければならず、一方が合格しても再受験の際に免除なし。
合格基準
学科&実技ともに70%以上かつ平均75%以上
合格率
非公開
なお、この資格はあまりに難関である為、1954年から今日まで800名しかいないようです。しかも、1981年以降は合格者が一人も出ず、一時期試験自体が中断されていたようです。
すごい世界ですね・・・。
ちなみに、直近でこの資格に合格された天才達がここに掲載されています。
CMW合格者
あと参考までに、トップレベルの時計職人がロレックスを分解&組み立てている動画を紹介しておきます。もう人間業とは思えません・・・。
機械式最高峰トゥールビヨン
世界中に様々な機械式時計がありますが、その最高峰の技術を集結したものが「トゥールビヨン」です。
トゥールビヨンとは、1800年代にアブラアム・ルイ・ブレゲによって発明されました。身に付けた姿勢差によって誤差が変化するという機械式時計の弱点を克服する為に、機械式自体を回転させる事で姿勢差を平準化しています。
そんなトゥールビヨン。
実際にどのようなものなのか動画をご覧下さい。その神秘性に驚愕されるはずです。
ランゲ&ゾーネ 1815
ブレゲ3657BA/12/9V6
Jacob&Co.Astronomia
時計関連記事
私は機械式時計を2本所有しています。
ロレックスの『エクスプラーラーII』と、オメガの『スピードマスタープロフェッショナル』。
同じモデルの購入を検討されている方や、オーバーホールの情報を知りたい方は参考にして下さい。
私は時計職人ではありませんが、他業種のエンジニアです。これまで取得してきた技術系資格について下記ページに一覧表でまとめていますので、ご参照下さい。
興味のある資格があれば、リンクをクリックする事で試験対策&勉強方法などの記事を開く事が出来ます。